2024/07/20 12:10

むかーしに書いた詩というかよくわからないものが出てきたので掲載。何ともいじらしい文章…





数年前の話。よく晴れた春の日の夕方5。房総半島の最東端に程近い地元にある、広大な公園でのこと。腕白なのに臆病な犬は、例え蛇に噛まれたって、平感覚を失ったって、血尿が出たって、白くて大きな風車に繋がる、その長い砂利道を走る。 

 

私は落書きのされた汚い木製のベンチに座り、発泡酒を飲みながら、その犬の走る様子を見ていた。夕焼けに照らされ、どうかすると燃え上がってしまいそうな真っ赤な芝生、砂利、薄汚れたベンチに備え付けられた木製の灰皿、そして大きな風車。サリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」を読むと必ず思い出す、あの崖もすぐそばにある。

 私は71を思った。

彼が亡くなった71はとても良い天気で、雲ひとつなくて、とっても蒸し暑くて、そして私はひどい二日酔いで。彼が私の家にやって来たのは十何年も昔。私が小学生の頃。

 

ーー

 

ふと我に帰った。

 

夕陽で真っ赤になった芝生の上で、石ころが欠伸した。つられて私も欠伸する。ほろ酔い気分で気持ち良いが、発泡酒は温くなってきた。ボロボロになったラグビーボールのおもちゃと湿った週刊誌が落ちている。崖の向こうにはベルベットの海が輝く。だんだんと夕陽は沈み、徐々に辺りは薄暗くなってきた。遠くを走る犬がどんどん小さくなっていく。あんなに遠くまで行って戻って来られるのだろうか、迷子にならなければ良いのだが。そう思いつつも私はホールデン・コールフィールドの夢を見る。いつでも私は自分の事で精一杯なのだ。

 とうとう夜になってしまった。瑪瑙の満月が、真っ赤なザイルクライミングのテッペンで子守唄を口ずさみ、石ころが瑠璃色の眠りに落ちる。私はすっかり空になってしまった発泡酒の缶を片手に、まだ、落書きのされた木製のベンチに座って居る。大きな風車が月あかりで冷たく光る。あの犬が見えなくなってしまったので、私はいっそ目を閉じてしまうことにした。

そうして何時間経った頃だろうか、太陽が少し顔を出した。薄紫色に焼けている空に朝露が昇っていく様子をぼんやりと認めた。私は落書きのされた汚い木製のベンチに座って居る。石ころがまた欠伸した。犬は本当にどこかに行ってしまった。









色々あって2024年はまだ本を一冊も読んでいない。恐らく今年は一冊も読まないであろう!なーんにも気にせずに1週間くらい本を読んだりギター弾いたりして過ごしたい。責任なんぞ蠅にあげてやろう。